二足歩行ロボットを制御する「V-Sido」は、人間の動きの制御にも通用する
―― 「RoboChemia® GS Knee®」における「V-Sido」の役割を教えてください。
安齊:「V-Sido」は「EAMブレーキデバイス」のコントロールをしています。我々はソフトが作れないので、すべて「V-Sido」が担っている形です。アスラテック様には、二足歩行ロボットの制御技術を応用した歩行制御のアルゴリズムを基に、ブレーキ制御に関わるプログラムや基板の開発で協力いただきました。
―― 「V-Sido」が福祉・介護分野に採用されたのは初めての事例です。どのような経緯で「V-Sido」が採用されることになったのかお聞かせください。
安齊:「V-Sido」をはじめて知ったのは、NHKの番組『サイエンスZERO』でした。ロボットが自立歩行をし、なおかつ外力に対して非常に強いというところに興味を持ち、二足歩行ロボットの膝の部分を応用し、人間の膝の動きを制御する「RoboChemia® GS Knee®」を「V-Sido」でコンロトールできないかと考え、お声掛けさせていただきました。
発売はこれからですが、まず製品化までこぎつけられたのは「V-Sido」というソフトウェアのバックアップが大きいと感じています。最初は他社のロボット制御システムも検討しましたが、やはり二足歩行ロボットのOSであるという点が、膝のコンロトールを行うという目的に大きく合致しました。
「V-Sido」のようにOSとして提供している会社があまりないということもありますし、ライセンスビジネスとして提供されているという点でも非常に魅力を感じました。「RoboChemia® GS Knee®」の場合、試作段階では開発ライセンス、モニター段階で商用ライセンスを提供いただくことで、商用化までのハードルがかなり低くなりました。ソフトウェアという目に見えない電子データではあるけれども、製品の中に組み込まれている非常に重要な部品のひとつです。
―― ロボットではなく人の膝をコントロールする上で、「V-Sido」のメリットはどのようなところにあるのでしょうか?
安齊:当初は足の裏にセンサーを入れ、それによってコントロールすることも考えていました。けれども、麻痺をしている患者さんは足のどこを使っているのかが分からないため、その動きを拾って制御に使うことはできません。「V-Sido」の場合、本体に入れた加速度センサーやジャイロなどで制御できるというメリットがあります。
最初の段階で、健常者の歩行における膝のコントロールをすべて「V-Sido」によって自動で行えたというのは画期的なことでした。膝のブレーキをコントロールすることは非常に難しく、やはり二足歩行ロボットの制御技術だけあるなと感じました。
ただ、麻痺している患者さんの歩き方は健常者とは全く異なっていて、患者さんを支えるにはまだ危険な部分がありました。そのため自動ではなく、患者さんの動きに応じて理学療法士がスイッチで操作するようにしたのです。現場運用を実施している病院からも非常に良い反応をいただいています。